European Journal of Endocrinology (2020) 183, 381–387
要約
目的
この研究は、COVID-19 に関連するサイトカインストームが甲状腺機能に影響するか、もしくはSARS-CoV-1 感染について認められたように、SARS-CoV-2も甲状腺細胞に直接作用するのではないかという仮説に基づき、COVID-19感染を起こした患者の甲状腺機能を評価した。
設計と方法
この単一施設研究はレトロスペクティブに、COVID-19感染により非集中治療室に入院した287 人の患者 (男性 193 人、年齢の中央値: 66 歳、範囲: 27 ~ 92 歳) の甲状腺機能検査と血清インターロイキン 6 (IL-6) 値を評価した。
結果
58 人の患者 (20.2%) に甲状腺中毒症 (明確な症状は31症例)、15 人 (5.2%) に甲状腺機能低下症 (明白な 2 症例のみ)を認め、214人 (74.6%) が甲状腺機能正常であった。血清甲状腺刺激ホルモン (TSH) 値は、患者の年齢 (rho -0.27; P < 0.001) および 血清IL-6値 (rho -0.41; P < 0.001) と逆相関していた。多変量解析では、甲状腺中毒症はより高い血清IL-6値と有意に関連していた(オッズ比:3.25、95%信頼区間:1.97–5.36; P <0.001)が、患者の年齢との関連は認めなかった(P = 0.09)。
結論
この研究は、COVID-19 が、SARS-CoV-2 感染によって誘発される全身性免疫活性化と関連して、甲状腺中毒症の高リスクに関連している可能性があるという最初のエビデンスである。
コメント
COVID-19感染後に熱が再燃し、咳が続き、食思低下と動悸・体重減少・発汗過多を訴える60代の患者さんが受診され、甲状腺機能亢進を認めたため、COVID-19との関連を調べていてこの文献を見つけました。COVID-19感染後の20%が甲状腺機能亢進を、5%に甲状腺機能低下を認めるというのは、にわかに信じられない結果ですが、注意しておく必要がありそうです。