京都家庭医療学センター

京都家庭医療学センター

Kyoto center for family medicine (KCFM)

トピックス

症例提示その後

 今回は先週の症例提示のその後の経過を報告しました。
① 要介護、認知症の高齢女性。慢性心房細動を伴ううっ血性心不全(Clinical scenario 2)で入院。胸部CTで右肺野の腫瘤影、右有意の胸水あり。利尿剤で治療中、腎機能が悪化し、うっ血か脱水かの病態で悩ましかった。心エコーや血液検査など総合的判断で脱水状態と考え、補液を行ったところ、今度はVolume Overとなり、夜間に急激な酸素化低下・血圧上昇きたしClinical Scenario 1に移行してしまった。NPPV、Ca拮抗薬使用し加療中。
心房細動のレートコントロール目的のβブロッカーはごく少量から開始すること(過量だと陰性変力作用で心不全増悪に拍車をかける可能性あり)。
② 要介護の高齢女性。うっ血心不全で入院。胸部CTで肋骨に接する腫瘍を疑う陰影あり。心不全に対して利尿剤で治療していたが、BUN/Creの悪化あり治療に難渋していた。
その後、貧血、蛋白Alb乖離、骨病変などの所見と併せて、多発性骨髄腫ではないかと疑い、蛋白分画など各種検査を提出中。骨髄穿刺は全身状態から行いにくい。
多発性骨髄腫のCRAB(高Ca血症、腎障害、貧血、骨病変)を忘れずに。蛋白Alb乖離は、Albが低値のとき総蛋白は基準値で出ることあり盲点。
複雑性の高い症例にCynefin Frameworkという整理の仕方がある。
(参考)https://fujinumayasuki.hatenablog.com/entry/2014/05/31/194038
先週まで似たようなプレゼンテーションだったうっ血性心不全の2例ですが、入院経過中にそれぞれ全く別の病態が見えてきたのは大変興味深かったです。
報告者:加瀬 1年目専攻医