京都家庭医療学センター

京都家庭医療学センター

Kyoto center for family medicine (KCFM)

トピックス

症例の報告と考察

 今回は、経験した症例についての報告と、それについての考察を行いました。
入院する何週間か前から頻繁に転倒するようになっていてリハビリテーション目的で入院となった患者さんがいました。経過から、両側変形性膝関節症が転倒の主な原因として考えられていましたが、もっとしっかり鑑別疾患をあげて、それらのrule outに努めることが好ましかったと考えられました。
 易転倒性の鑑別について考えました:
神経系の疾患で言えば、小脳変性症、パーキンソン病、PSP 神経にも、中枢神経系の疾患や、末梢神経系の疾患があります。
整形外科的な疾患 両側変形性膝関節症以外にも、脊柱管狭窄症など筋疾患
ほかにも、貧血、起立性低血圧、脱水など。
 転倒の原因として、失神が原因ということもあります。失神を起こす疾患(何らかの理由で脳への血流が低下した状態)についても鑑別があげられました:血管迷走神経反射、心原性のもの(心筋梗塞など)、大動脈瘤破裂など出血をきたす疾患、薬剤性など。
 別の過去の患者さんで、失神があり、経過からまず血管迷走神経反射が疑われていたが、精査で大動脈瘤があった方がいたとの指摘もありました。
 もうひとつの症例で、急激に認知機能が低下し、診断がなかなかつかない患者さんについての提示がありました。典型的なアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症とは考えがたいぐらいの速さでの認知機能低下が認められました。急激な認知機能低下を伴う疾患には、全身性エリテマトーデス(CNSループスという概念があります)、シェーグレン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病などが鑑別に上がります。
 報告:三上哲也