京都家庭医療学センター

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Kyoto center for family medicine (KCFM)

トピックス

サイクリングは糖尿病患者の死亡リスクを低減する。

Association of Cycling With All-Cause and Cardiovascular  Disease Mortality Among Persons With Diabetes
The European Prospective Investigation Into Cancer and   Nutrition (EPIC) Study 

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2021.3836 Published online July 19, 2021. 

重要性

全ての原因および心血管疾患(CVD)に起因する早期死亡は、糖尿病患者に多い。

目的

サイクリングに費やされた時間と糖尿病患者の全死亡およびCVD死亡との関連を調査し、あわせてサイクリング時間の変化と全死亡およびCVD死亡のリスクとの関連を評価する。

デザイン、設定、および対象者

この前向きコホート研究には、欧州の癌と栄養に関する前向き調査に登録されている糖尿病の成人7459人が含まれた。病歴、社会人口統計、およびライフスタイル情報に関するアンケートは、1992年から2000年まで西ヨーロッパの10か国で実施され(ベースライン調査)、ベースラインから5年後に2回目の調査が実施された。合計5423人の対象者が両方の調査を完了した。最終的に更新された一次分析は、2020年11月13日に実施された。

暴露

一次曝露は、ベースライン調査で自己申告された1週間当たりのサイクリングに時間であった。二次曝露は、初回から2回目の調査までのサイクリング状態の変化であった。

主な転帰と測定法

一次および二次転帰は、それぞれ、身体活動様式、糖尿病罹病期間、社会人口統計的およびライフスタイルの要因に合わせて調整された、すべての原因による死亡およびCVDによる死亡であった。

結果

糖尿病成人7459人が対象となり、平均(SD)年齢は55.9(7.7)歳、3924(52.6%)は女性であった。 110 944人年の追跡期間中に、1673人の死亡が登録された。ベースラインでサイクリングしていない(0分/週)と報告したグループと比較して、全死亡の多変数調整ハザード比は、サイクリング時間1から59分/週が0.78(95%CI、0.61-0.99)、60から149分/週が0.76(95%CI、0.65-0.88)、150から299分/週が0.68(95%CI、0.57-0.82)、および300分以上/週が0.76(95%CI、0.63-0.91)であった。57 802人年の追跡におけるサイクリング時間の変化に関する分析では、全死亡数は975人であった。ベースラインと5年後の両方の調査でサイクリングしていないと報告したグループと比較して、全死亡の多変数調整ハザード比は、サイクリングしていたが途中でやめたグループは0.90(95%CI、0.71-1.14)、サイクリングをしていなかったが途中で開始したグループは0.65(95%CI、0.46-0.92)、サイクリングを継続していたグループは0.65(95%CI、0.53-0.80)であった。同様の結果がCVD死亡でも観察された。

結論と関連性

  このコホート研究では、サイクリングは、他の種類の身体活動の実践とは無関係に、糖尿病患者の全死亡とCVDによる死亡のリスク低下に関連していた。ベースラインと2回目の調査の間にサイクリングを始めた参加者は、一貫した非サイクリストと比較して、全死亡とCVD死亡の両方のリスクがかなり低かった。

キーポイント

臨床的疑問

  糖尿病患者において、サイクリングは全ての原因による死亡と心血管疾患による死亡のリスクと関連しているか?

調査結果

  糖尿病患者7459人を対象としたこのコホート研究では、非サイクリストと比較した場合、他の身体活動や推定交絡因子とは無関係に、サイクリングは少なく見積もっても24%の全死亡の減少と関連していた。5年間の観察期間中にサイクリングを開始することは、一貫した非サイクリストと比較した場合、少なくとも35%の全死亡の減少と関連していた。

臨床的意味  サイクリングは、糖尿病患者が早期死亡リスクを減少させる活動として推奨され得る。