京都家庭医療学センター

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Kyoto center for family medicine (KCFM)

トピックス

第10回KCFM家庭医療学セミナーふくちやま2024 開催報告

テーマ 「高齢者虐待防止と対応を考える」

     ~地域の多職種のネットワークで高齢者の人権を守ろう~

日時) 2024/9/28 (土) 14:30から17:25

場所) 京都府立中丹勤労者福祉会館

京都家庭医療学センター(KCFM)

京都保健会 ふくちやま協立診療所 寺本 敬一

2015年から数えて10回目のセミナー開催です。2020-2023年度は、COVID-19の感染拡大防止のため、オンライン開催でしたが、今回は、新型コロナ禍の第11波が丁度落ち着いたタイミングとなり、久しぶりに対面形式の研修会を開催することが出来ました。

 今回のセミナーに選んだテーマは、「高齢者の権利擁護、虐待防止と対応」です。2024年4月から高齢者虐待防止指針の策定などが義務化されたタイミングであり、日常診療で遭遇することもあり、まさに行政含めて、多事業所、多職種との協働が重要な課題と考えられました。虐待対応を担当されている、京都府障害者高齢者権利擁護センター 今井昭二氏、福知山市地域包括ケア推進課の塩見康平氏に講演をお願いしました。また、当院の取り組みを発表しました。その後、事例検討をグループワークで行いました。

 研修目標としては、高齢者の権利擁護、虐待への感度を高めること、虐待についての基本的知識、予防、通報のタイミング、虐待対応、適正な身体拘束の考え方などの習得としました。

 参加されたのは、32名(グループワーク31名)ケアマネジャー11名。看護師8名(グループワーク参加は7名)、医師3名、リハビリテーション2名、行政2名、介護職1名、その他6名。

 福知山地域25名、綾部地域5名、中丹以外2名

今井氏から、「高齢者虐待防止と対応を考える」についてご講演いただきました。

 「いつでもどこでも虐待の種はある」ので、虐待、権利擁護に対する感度を高めておくこと、自らが権利侵害をしかねない立場にあることを再認識する必要があることを教えていただきました。高齢者虐待防止法の位置づけ、あいまいでなく数字など具体的な記載の重要性、一人で抱え込まずチームで対応すること、虐待に対する自覚は問われないこと、疑いの時点で、行政に相談/通報してよいことを学びました。虐待かどうかを判断するのはあくまで行政。高齢者に生命又は身体に重大な危険が生じている場合には、市町村に通報義務があること、その他でも虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに市町村へ通報することが努力義務。通報において、通報者は守られ、かつ被虐待者の個人情報保護の例外に該当する。

  塩見氏からは、「高齢者虐待対応について(福知山市の現状)」についてご講演いただきました。2023年度の高齢者虐待の相談受付は19件、心理的虐待、身体的虐待、経済的虐待、介護放棄などの順に多い。通報者は、警察、関係者、病院、知人、民生委員などの順に多い。虐待者は、同居の子供、配偶者の順に多い。虐待認定は7件で、施設への措置2件、成年後見制度利用が1件。

 対応の流れとしては、相談受付、方針検討、事実確認、コアメンバー会議、認定、虐待対応、モニタリング、評価、終結。

 相談受付から事実確認開始まで平均1日以内。受付から認定まで平均11日。認定から終結まで平均9ヶ月。

  地域事業所の取り組みとして、ふくちやま協立診療所の取り組みを発表しました。当院の高齢者虐待事例の概要紹介(10年で7件)、虐待対応に関して感じている現実の課題、当院の取り組み(高齢者虐待防止のための指針の策定、院内学習会の開催)、ネクストステップ(虐待予防としても、家族の介護負担の軽減を図り、介護者に認知症ケアについての情報提供する重要性、地域連携を向上させること)を発表しました。

 グループワークは、各グループ5名くらいで、6グループに分かれて実施しました。やや時間が足らなくて申し訳なかったですが、多職種の立場から多視点の意見を共有して、本人、家族の最善を目指した支援のあり方について議論することが出来ました。

 日頃聞くことがあまりなかった、行政の方からの講演で、行政の方がどのように高齢者虐待について考え、行動されているのかが今回よくわかりました。対応に悩んだら、相談/通報してよいこと。相談、通報に区別はないこと。今回のセミナーは本人、家族の最善、権利擁護のため、地域における顔の見える連携がさらに向上する機会となったと思います。

 事後アンケートでも、高い満足度、学習効果の確認ができました。  

ご多忙の中、ご参加いただいた方々に改めて御礼申し上げます。今後もよろしくお願い申し上げます。

キーワード

 #高齢者虐待予防、対応 #高齢者の権利擁護 #適正な身体拘束 #多職種連携協働/学習