京都家庭医療学センター

京都家庭医療学センター

Kyoto center for family medicine (KCFM)

トピックス

症例検討および文献学習

2026/1/27のレジデントデイは、症例検討および文献学習を行いました。

 症例検討

 肺炎改善後も低酸素血症が遷延した高齢女性において、造影CTで肺塞栓症を診断し、抗凝固療法を行った症例を検討しました。症例は80代女性で、介護医療院に入所中の方です。基礎疾患として間質性肺炎があり、プレドニゾロン5 mg/日を内服していました。37℃台の発熱とSpO₂ 90%(room air)と低酸素血症を認め受診し、胸部CTで新規の浸潤影を認めたため、細菌性肺炎を疑い抗菌薬治療を開始しました。抗菌薬を6日間投与した結果、炎症反応は改善しましたが、入院10日目になっても経鼻酸素2 L/分の投与が必要な状態が続いていました。採血でD-dimerが8.2 μg/mLと高値であったため造影CTを施行したところ、右肺動脈主幹部に血栓を認め、肺塞栓症と診断しました。ヘパリンおよびワルファリンによる抗凝固療法を開始したところ、酸素需要は消失し、最終的に退院可能となりました。なお、下肢静脈エコーでは深部静脈血栓症(DVT)を示唆する所見は認めず、心エコーでも右室負荷所見は認められませんでした。ディスカッションでは、下肢静脈エコーで血栓が認められなかった点から、菌血症や感染性心内膜炎などに伴い、菌塊が肺動脈内皮に付着して敗血症性肺塞栓を来した可能性についても議論されました。しかし、本症例では血液培養が提出されておらず、血栓の由来については明確にはできませんでした。また、比較的大きな血栓が存在していたにもかかわらず、心エコーで右室負荷所見がみられなかった点も興味深い所見でした。本症例では長期にわたりステロイドを内服しており、易感染状態にあったと考えられるため、初期対応の段階で血液培養を含む各種培養検査を提出すべきであったと考えられました。

文献学習

 入院患者の血圧管理に関する文献を取り上げました。入院中に血圧が一過性に上昇したものの、特に自覚症状を伴わない場合に降圧介入を行うべきかどうかを検討した研究です。本研究では、入院中に血圧上昇を認めた患者66,140人(平均年齢74歳)を対象に、入院初期に集中的に降圧治療を行った群と、積極的な降圧を行わなかった群の2群に分け、入院中に生じた有害転帰(死亡、ICU転室、急性腎障害、心筋障害など)を比較しました。その結果、集中的に降圧を行った群では、有害転帰が28%多く認められました。さらに、降圧方法別に解析すると、静脈注射薬による降圧では有害転帰が90%増加し、新規内服薬のみの場合でも15%増加していました。これらの結果から、静脈注射薬による急激な血圧低下が主要臓器への血流低下を招き、臓器障害の増加につながった可能性が示唆されます。以上より、入院患者における一過性の無症候性高血圧に対しては、必ずしも降圧治療を行う必要はなく、むしろ過度な降圧介入は有害となる可能性があると考えられます。

参加者(敬称略):高木、山田、玉木、宮川、出口、三上、本多、山形

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