京都家庭医療学センター（KCFM）
公益社団法人 京都保健会 ふくちやま協立診療所
寺本 敬一
BATHE法１）２）とは、簡単に実施できて日常臨床上、効率的かつ効果的な治療的対話術、精神療法です。“BATHE”は、Background(背景)、Affect（気持ち）,Trouble（一番困っていること）,Handling（対処法）,Empathy（共感）の頭文字の語呂合わせです。短時間で、患者さんの心理社会的な問題をスクリーニングしながら、感情的な問題にも対処することができて、患者さんの満足度を向上させ、臨床医も時間を有効に使え、良い介入ができることでやりがいも高まります。身体化症状の固定化を早期から防ぐ効果も期待されます。この中でも、特に、Trouble（一番困っていること）を自分自身で考えてもらうことで、焦点が定まりやすくなり、患者自身のHandling（対処法）を、担当医から共感を受け、支持、認められることで、患者さんが救われることになります。Evidence３）４）５）も蓄積されつつあります。日常診療では、心理社会的、精神的な問題の頻度は高く、初診時や、新たな問題、心理社会的な問題があるときに特に効果的です。The Fifteen Minute Hour: Efficient and Effective Patient-Centered Consultation Skills１）２）にて詳しく紹介されており、家庭医や多忙な一般内科外来を担当されているのであれば、一読なさることを強く勧めます。
また、Positive BATHE法１）２）は、ポジティブ心理学、appreciative inquiryを基に開発された、現実を楽観的に前向きに捉えることを促す治療的対話術です。今回の“BATHE”は、Best(一番良かったこと)、Affect（気持ち）/Account(説明),Thankfulness（感謝していること）,Happen（頻度を増やす）,Empathy（共感）/Empowerment（エンパワメント）の頭文字の語呂合わせで、順に聞いていきます。経験したことの良い面に注目することで、幸福度を高め、感謝の気持を持つことは健康状態の改善につながります。Positive BATHE法は、慢性疾患のフォロー時に効果を発揮します。Best(一番良かったこと)があれば、話は広がり、うまく回りやすいです。一方、何も良いことがなかったと言われることもままあります。そんなときには、良いことがなかったことをどう思うか？と尋ねるか、次回診察までの宿題にして、良いこと探し、前向きに人生をとらえる練習につなげてもよいかもしれません。
“Hope should be prescribed regularly”１）
BATHE法やPositive BATHE法を使いこなせるかどうかで、多忙な日常外来診療は大きく違ってくると思われます。
2019/2に日本プライマリ・ケア連合学会 第14回 若手医師のための家庭医療学冬期セミナーで、京都家庭医療学センター（KCFM）のスタッフが「Positive BATHE法を学ぼう」というテーマでワークショップを開催したところ、参加者から好評をいただきました。
参考文献）
１）The Fifteen Minute Hour: Efficient and Effective Patient-Centered Consultation Skills, Sixth Edition（ Marian R. Stuart (著), Joseph A. Lieberman (著)）
２）外来診療によく効くBATHE法（生坂政臣 (監訳)）（メディカル・サイエンスインターナショナル）
３）To BATHE or not to BATHE: patient satisfaction with visits to their family physician. Fam Med 2008 Jun;40(6):407-11. Sandra R Leiblum etal
４）Acceptability of the BATHE technique amongst GPs and frequently attending patients in primary care: a nested qualitative study. BMC Family Practice (2019) 20:121 Thomas et al.
５）The effect of the BATHE interview technique on the empowerment of diabetic patients in primary care: A cluster randomised controlled study. Prim Care Diabetes. 2017 Apr;11(2):154-161. Selçuk Akturan et al
参考HP：https://15minutehour.com/